第一パン。 | 知らんがな。

第一パン。


僕が、ちっちゃい頃住んでた家の近くに
『第一パン』の大きな工場があった。

小学校の校区のはしっこにあって
ちっちゃい頃の僕たちの足では、
少し遠いところに位置していた。

工場の裏には、大きな公園と、
近所の駄菓子屋さんにはない品揃えの
駄菓子屋さんがあった。

だから、気分を変えた遊びがしたいとき、
いつもと違うラインナップのお菓子を食べたいときには
『第一パン』の方まで、遠征していた。

工場の近くにいくと、
何台もの『第一パン』のトラックが
次々に通っていく。


そんなことを、今日
上とは別の『第一パン』の工場の横を
たまたま通ったときに思い出した。

なつかしい日々だ。

しかし、僕の思い出は
正しくは、『第一パン』ではない。

『ヤーパン』だ。

トラックに書かれた『第一パン』のロゴは、
変換できないが、『第』の字が
簡単なほうの『ダイ』になっていて
ちっちゃい僕は、カタカナの『ヤ』と思って

「ヤーパン。」「ヤーパン。」と言っていた。

「今日やー、ヤーパンの公園いこうや。」

「ヤーパンのお菓子屋いこうや。」

といった感じだ。


結構大きくなっても、
僕は『ヤーパン』と思っていた。


『月極駐車場』⇒ゲッキョクチュウシャジョウ。
『モータープール』⇒ほんとの『プール』と思い込み。

ちっちゃい頃の
間違った思い出は、結構ある。

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この『ヤ一パン』の近くの家からは
小学校3年生のときに、引っ越した。

大学生のときのことだ。

彼女と楽しい、ちょっと背伸びしたクリスマスを過ごすため、
僕はバイトを探していた。

フロムエーかなんかを見ていたときだ。

クリスマスケーキ配達。
ドライバー&助手2名での応募OK!

という記事を見つけた。

記事の詳細をよく見ると、
募集先は、
あそこの『ヤーパン』だった。

僕は、迷わず応募して、
12月24日、彼女と
『ヤーパン』のケーキを運んだ。

ちっちゃいころ遊んでいた公園の横を通り抜けて、
クリスマスを心待ちにしている人たちのもとへ
クリスマスケーキを届けるのも、なんかオツなもんだった。

甘い甘い思い出だ。